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『あんこ』は目上の女性を親しみを込めて「おとらあんこ」など名前の下につけて呼びました。今では広く島の娘さんのこと、ちなみに私は男。   連絡メール

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あんこ人形誕生記
昭和初期、伊豆大島に生まれた農民美術「あんこ人形」、 島人に彫刻を指導した彫刻家木村五郎、60年彫り続けた職人の父、人形生誕から資料館を開くまでの回想と資料館の今と未来を記す
農民美術指南の恩人
資料館の正式呼称は「木村五郎・大島農民美術資料館」だ。
 「農民美術人形」について現存の人形を示して運動の歴史から現在までの顛末を指南してくれたのは教員OBのYさんだった。
 これまで記録上ではずっとYさんとしてきたが、ご本人の了解を得てご本名でご登場いただけることになった。
 埼玉県さいたま市岩槻区にお住まいの山口畑一氏(昭和2年生れ)は埼玉県立高等学校長で勇退されたが、もう長く郷土玩具人形・農民美術人形を調査・収集しておられる。
 はじめてお会いしたのは平成9年1月に行われた「大島町私蔵文化財展」の会場であった。山口先生は日本各地で作られた農民美術人形の研究を続ける中で、農民美術運動の現地講習会に積極的に講師として参加していた「彫刻家木村五郎」に着目し講習会を行った4地区のうち長野川路、秋田大湯の現地調査を既に済ませ、伊豆大島と京都宇治がこれからの調査対象の土地になっていた。大島で「木村五郎のことが話題になった頃」と山口先生との出会いが妙に一致している。
 「大島町私蔵文化財展」には木村五郎が指導した「あんこ人形」などの人形や資料が展示された、私の父は直接木村五郎氏に手ほどきを受けた訳ではなかったが、近年まで60年間人形を彫り続けた職人だった。
 父はその時は体調を崩しており山口先生と直接会って話しはできなかったが、自宅に残っている古い人形と10数年前にテレビで紹介された時のビデオを見ていただいた。夜は民宿で懇親会があって島の有志たちに「木村五郎と川路農民美術について」語っていただいた。
 農民美術運動は、画家で版画家の山本鼎が渡仏の帰路モスクワで見た農民が作った手工芸品をヒントに、大正7年「冬の農閑期を利用した農民が生み出す工芸品作り」を提唱して長野県上田から始まった。上田に日本農民美術研究所が設立され、農民への講習会は全国へ広がり、その地方の名物や風俗が作品となった。
 趣味と実益を兼ねた産業の成立を目指し、最盛期には全国で80数カ所の農民美術生産組合が組織され製作がおこなわれたが、戦争や経済不況のために運動は急速に沈静化し、設立から15年で日本農民美術研究所は解散することになった。
この運動に賛同した倉田白羊・吉田白嶺・山崎省三・平塚運一・足立源一郎・恩地孝四郎など多くの画家や彫刻家たちが講習会に係わって、受講生の技術の向上に力を貸していた。
 「農民美術の世界」、父の人形がすべてだったこの頃には、私にとってはずっと遠い存在だった。
 それから今日まで手紙のやりとりをして、見つけ出した資料の交換や農民美術人形の写真などを数多くみせてもらった。今はほとんど忘れられ埋もれたままになってしまっている人形を発掘、その数は千にも及ぶ、当資料館では山口先生からお借りした日本全国の農民美術作品など300数十点を展示している。
 2007年7月に掲載された新聞記事のインタビューの中で山口先生は「戦前の農民の貧しさ、苦しさが身にしみていることから、農民美術運動に共感しました。とかく低く見られ、見落されがちな民衆の芸術に目を向けてもらいたい。80年間、取り組む人のいなかった地方農民美術運動の全ぼうを明らかにするのが目標です」と語っている。
 山口先生は幾つかの病を得て、前のような精力的な調査活動は控えておられるが、運動の全ぼうに迫る本の執筆に取り掛かられる日は近いと思っている、「先生早く着手しないと間に合いませんよ」と伝えているのだが、まだ手つかずの現地調査地域も残っているようで、当分は併用のスタンスなのだと思われる。
 私の一番の関心事は「私の亡父が60年彫り続けた大島のあんこ人形は日本農民美術研究所の講習会が大島で行われ島人に伝授された人形だということ、その講習会の講師が日本美術院の同人の彫刻家木村五郎であった」ということだが、農民美術運動の全ぼうが活字化されることは大きな意義があるとずっと思ってきたので、いざという時に山口先生に協力できる態勢を整え、資料をまとめておきたいと思っている。大島で行なわれた講習会の受講者でご存命の方はおられないが、講習会の概要はほぼ把握できているのではないか、と自分では思っている。

 山口先生の新聞記事

 


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